知らない者には憧れない、なれない。子どもに夢を聞くのではなく、夢を見させることが大事だ。

自分がまだ幼かった時のことを思い出していた。あの頃僕はJリーガーになりたかった。清水エスパルスの選手になりたかった。沢登選手と一緒にプレーするのが夢だった。

理由は簡単で、そのとき習っていたのがサッカーで、サッカーを始めたきっかけは兄がサッカーをしていたからで、純粋にサッカーが好きだったし、愛読書はキャプテン翼だった(後にシュート派になる)。

つまり、たったそれだけのことなのだ。子どもの夢っていうのは。

そして僕はバカの一つ覚えのように、誰に聞かれても、何に対しても「夢はJリーガーです」と恥ずかしげもなく答えていた。そのたびに周りの大人からは「夢があっていいねぇ」とか「小さいのに夢があるなんて偉いね」なんて言われていた。そして僕少年は喜んでいた。大人に褒められるのが好きだったからだ。

ただし、今思えばこれがダメだった。

夢なんて簡単に決めちゃダメだ。もっと広い世界を見て、ちゃんと選ばなきゃダメだ。

現に、今僕はJリーガーじゃないけど、別に悔しくはない。そらJリーガーになれていたら嬉しかったかもしれないけど、現実的にJリーガーって食っていけない。

例えば同年代のJリーガーって誰がいるって、川島とか大久保だよ。それくらいしかいないのよ。あと佐藤とか田中も同年代かな。まじ一握り。

で、それほど年俸高くない。大久保はまぁ1億円ですけど。凄いけど、凄いけど、将来どうなるかわからない。

っていうか本当に一握り。大久保レベルでようやくそれ。超不運な骨折で選手生命ですら危ぶまれた田中達也は3000万。凄いけど凄いけど、引退した後どうするの。

話めちゃそれた。

で、何が言いたいかっていうと、夢なんて安易に決めさせるなっていう話。だから大人は聞くな。そっとしておけ。

むしろ「将来、何にでもなれるけど、どんな仕事があると思う?」と想像を膨らませてあげたい。

だって、この世界には無限の職種がある。僕が子どもの頃に知っていた職種はせいぜい10個くらいだ。サッカー、野球、警察官、お医者さん、学校の先生、スーパーの店員など。身近な存在だけ。っていうか。多分スーパーの店員に対してですら、それを「仕事」と捉えたことはないだろう。将来なりたい職業の対象ですらなかったと思う。その対象になるっていう事実をわかっていなかった。子どもってそんなレベルだぜ。

だから女の子は花屋さんとかケーキ屋さんとか言うんでしょ。それしか知らないから。

逆を言えば、もっと色んな夢を見させてあげれば、それを知れば、興味を持つかもしれない。つまり、可能性の話。これは親次第だよ。

めちゃくちゃ視野を広くさせてあげて、そして、どれもこれも勉強や努力が必要なことを教えてあげる。そして、いくつか興味を持って、やってみたいことを見つけたら、それに集中させてあげる。全力で応援、協力してあげる。

そういう子育てをしてあげたい、と思った。だって、可能性を無限大にさせてあげられるのは親だけだもん。学校の先生とかでは無理。彼らは学校の先生か、学生時代のバイトくらいしか社会を知らないんだから。

社会見学とか、今思えば無意味だったなー。なんも頭に入ってなかったわ。だってJリーガーになるって本気で思ってたから。そして中学生になってからは学校の先生に夢が変わるんだけど、それも高校卒業までの話。その後は…。

なんて視野の狭い人生を歩んできてしまったんだ俺は。アホだ。子どもに同じ轍を踏ませるわけにはいかない。